ソフロロジー式分娩法
当院で出産される方に向けて、ソフロロジー式分娩法について、体験談も踏まえて丁寧にお教え致しますのでご参考にしてください。
当院で出産される方に向けて、ソフロロジー式分娩法について、体験談も踏まえて丁寧にお教え致しますのでご参考にしてください。
この“新しいいのち”にとって心と体の成長に必要なこと…、
それは…、お母さんの「あたたかく包みこむ手」と「やさしい声」です。
今は、小さな小さな“いのち”でも、お母さんの想いはちゃんと届いています。
日、一日と育っていく赤ちゃんに、お母さんも会いたくて、たまらないはずです。
そんな待ち遠しい気持ちにさせてくれるのが、「ソフロロジー式分娩法」です。
ソフロロジーとは、西洋のリラックス法と東洋の精神修行である禅やヨガを組み合わせ、精神(心)と肉体の安定と調和を得る方法です。
その手段として自立訓練法によるリラクゼーションやイメージトレーニング、呼吸法などがあります。
それらにより、これから自分に振りかかってくる困難も自然に受け入れ、前向きに対処出来るようになります。
これからの人生を、明るく、積極的に生きることが出来るのです。
赤ちゃんは自分の力で生まれ出ようとしています。
少し難しい言葉を使ったお話になりますが、ソフロロジーを深くご理解いただけます。
分娩における生命の危険は母児にとって最大の脅威であり、またそれに伴う痛み、つまり産痛は妊産婦にとって大きな恐怖でした。
今世紀後半における目覚ましい周産期医療の進歩は、母児の危険を著しく減少させることに成功しましたが、一方では、医療の介入は女性に本来備わっていた自ら産み出す力、つまり母性を奪う結果をも産み出したのです。
こうした傾向への反省から、妊婦に妊娠・分娩に関する正しい知識を与えて、無知から生じる恐怖・緊張・疼痛を緩和し、より良い分娩に導こうとする出産準備教育が行われるようになったのは当然の成り行きでしょう。
リードによる自然出産法やラマーズによる精神予防性無痛分娩法は、こうした流れにしたがって普及してきたものであり、ここに紹介するソフロロジー式分娩法も、その1つと考えられます。
ただ、ラマーズ法は、産痛が大脳皮質を介した条件反射によるものであるとするソ連の生理学者パブロフの理念に基づき、「出産は自然の機能である限り、痛みを伴う必要はない」と確信し、無痛を得ることを基本としています。
その後、米国を経由して、この10年ほどの間に日本でも改良されて普及するうち、呼吸法・弛緩法なども大変具体的になってきましたが、ラマーズ自身はあくまでも分娩時の無痛化を図るためにパブロフの原理を応用しようとしたものであり、意識はできるだけはっきり保つことを要求しています。
呼吸法も、子宮収縮から疼痛への反射を子宮収縮から特殊な呼吸という反射に変えるためのものであるとされています。
つまり、痛みの起源をたどり、その反射経路を分析して、それに対抗しようとする、いわば産痛に打ち勝つ方法を教えるもので、西洋的な色合いが濃いといえます。
一方、ソフロロジーはインドのヨガや日本の禅に源流を発し、すべてをあるがままに、しかも前向きに受け入れるという東洋的発想に、西洋で用いられているリラックス法が結びつけられており、分娩時の苦痛だけでなく、産褥期や母乳育児に関するトラブルなど、人生の苦局に立たされたときに応用できる幅広い方法です。
つまり、人生において難問や不慮の出来事に直面した際、いかによく心身をコントロールするかを教える、いわば苦しみを喜びに変える処方せんとでもいえるものです。
ソフロロジーでは、意識のレベルを1覚醒状態の段階、2睡眠状態の段階、3その中間のソフロ-リミナルな段階の3つに分けており、1の覚醒状態を要求しているラマーズ法と異なり、3の眠りに落ちる間際の状態、つまり肉体的・精神的緊張緩和状態を求めています。
そして、こうした状態にさせる(ソフロニゼーション)には、ギリシャ時代にソクラテスが用いたというテルプノス-ロゴスと呼ばれる、優しく単調な言葉を用いるのが良いとしています。
このように、ソフロロジーは呼吸法・弛緩法など、表面的にはラマーズ法と同じような方法論を用いていますが、基本としている考え方は異なっています。
子宮収縮は苦痛ばかりでなく、頸管の開大、胎児の下降、回旋を促す効果があると教え母と子の最初の共同作業として前向きに出産と取り組む姿勢をもたらすソフロロジーは、より満足のいく出産への新しい道を開くものと思われす。
コロンビア出身のスペイン人精神神経科医アルフォンソ・カイセド博士がソフロロジーの基礎をつくったのは、1960年代、マドリッドでのことでした。
ソフロロジーは人間の意識、つまり意識の構造と可能性、ならびに心身の諸条件から生じる意識変化を研究します。
カイセド博士が「ソフロロジー」(sophrologie)という言葉を創造しましたが、その語源は次の通りです。
―ソ(sos):調和、平穏、平安、安定
―フレン(phren):心気、霊魂、精神、意識
―ロゴス(logos):研究、論議、学術
つまり、ソフロロジーとは意識の学問であり、精神の平安と安定、調和を得るための方法を学ぶことといえます。
カイセド博士は意識とその諸相を研究するために2年間にわたり、インドと日本を旅行しました。そこで彼は東洋医家や神秘家、ヨガ行者との出会いを通して、ヨガ・仏教・禅などの知識を深めました。
スペインに帰国したとき彼の中には、意識研究のために東洋の技法を西洋の技法にとりいれようという考えがありました。その結果、西洋のリラックス法(特に、シュルツとジェイコブソンのリラックス法)に東洋技法を結びつけることによって、ソフロロジーを軸としたダイナミック(積極的)リラックス法を開発したのです。
積極的リラックス法とは、筋肉の緊張を意図的に弛緩させることで、以下のような効果があります。
それらは、身体図式(ボディ-シェーマ)の把握を助けます。
ここでいう《回復》(recuperation)とは、疲労をいやすことではなく、語源となるラテン語のレクペラーレ(recuperare)のもう1つの意味を指しています。それは、筋肉を訓練することによってもたらされる肉体的感覚を意識することにほかなりません。つまり、訓練によって生じた感覚に意識を集中し、しっかり覚えておくことです。
このような訓練を通して、みずからの肉体についての具体的な意識が大脳皮質の中に刻み込まれます。
積極的リラックス法は、筋肉の活動によって生じる緊張(活動性緊張)に積極的に働きかけることにより、意識の上に好ましい作用をもたらすことを目的とするものです。
緊張は次のように区別されます。すなわち、努力を必要としない基礎緊張と、活動性の緊張です。
活動性の緊張には、次の3つがあります。
積極的リラックス法では、活動性の筋肉緊張を通して意識(精神的緊張)に働きかけます。逆に《精神的緊張》は、筋肉緊張に作用を及ぼします。
したがって、非常に慎重な人では、行動に入る前からすでに高度の筋肉緊張があります。
反対に、気持ちの散漫な人は反応がおそく、その筋肉は行動に入る前の準備ができていません。
ヨガ行者ラジャの創始した方法を洗練させたもので、肉体運動ならびに呼吸練習から成っています。
これはまた、「集中的リラックス法」とも呼ばれますが、それは次のような感覚に精神を集中する助けとなります。
これは体内の器官に由来する感覚で、 血管および内臓内の鋭敏な受容器への刺激によって生じます。血管の受容器 は痛みや拡張に敏感であり、一方、内臓の受容器は拡張または炎症に対して 敏感です。
痛み・圧力・張力に敏感な骨、関節・筋肉および腱の受容器に加えられる刺激によって発生します。
外部からの刺激に敏感な皮膚にある受容器の興奮によって起こります。接触、熱、痛み、ならびに圧力の感覚です。
このほか、訓練後の回復の感覚にも役立ちます。
以上の感覚は、私たちが自分の肉体を所有しているという意識を高め、それによって肉体の開花を促すという点で、大変重要なものです。
わかりやすくいいますと、例えば、語彙の少ない人の話は、言語活動が貧弱で、自分の考えを表現するのに、わずかな用語や言い回ししか持ちません。
同じように、活力のない肉体や感受性の乏しい肉体は、表現力や伝達性に欠けた物の言えない肉体です。
この喩えでおわかりのように、積極的リラックス法は、実行する人に自分の肉体のいろはを教えるものといってよいでしょう。
実際、このリラックス法では、きちんと順序立った訓練方法により、本来、妊婦自身のものであるにもかかわらず、普段は気付かずにいる基本的な感覚を自分のものとして認識するようしむけます。この点は重要です。積極的リラックス法では、単なる肉体としてではなく、存在意識としてとらえるわけです。
これを、身体図式(ボディ-シェーマ)と呼びます。
このようなやりかたを実行することにより、その人はみずからの肉体に話しかけ、その声を聞き、調和を広げていくことができます。
意識の外が湾の世界を想起し、空間と時間の中に身を委ねるようにします。
この段階の訓練は、肉体運動と結びついた可視化の練習(イメージトレーニング)から成ります。すでに第1段階で身体図式を把握する練習をしましたが、ここでは一歩進んで、人生や人間性を背景とする自己の存在図式の中で自分自身を具体的に調和よく位置づけることを学びます。
それらは、感覚器官の知覚力をみがく第1段階の訓練によって完全なものとなります。
禅から派生した訓練法を通して、第1・2段階の訓練で得た肉体活動と精神活動との調和をさらに高めます。 この段階の訓練は、次のような構成になっています。
調和と安定を旨とする、この座法は継続的な訓練と努力を必要とします。少なくとも、初めのうちはそうです。
以上が、カイセド博士によって定義づけられたソフロロジーの概要です。
博士は、各段階を、2週間にわたって毎週4回の割合で、それぞれ約1時間、専門家の指導のもとに学ぶように指示しています。
これによって妊婦は、積極的リラックス方の技術をそれぞれ自分に合った形で身につけることができます。そして毎日20分間ずつ練習することで、心身両面の活力が強化できます。
ソフロロジーの領域は医学のすべての分野、なかでも精神医学・心臓科学・胃腸科学・産婦人科学に及んでいます。そして、その訓練法は助産婦や歯科医にも活用されています。
カイセド博士は、新たな理論体系を次のように組立てています。
《ソフロニゼーション》とは、カイセド博士がソフロニック意識と名付ける意識状態になるために、意識段階の変化をもたらす過程をいいます。もっと簡単にいうと、《眠りに落ちる間際》で肉体的・精神的な緊張を緩和することです。
このソフロニゼーションは、ソフロロジー専門家が、テルプノス-ロゴスと呼ばれる静かで穏やかな規則的な声を用いて誘導します。このテルプノス-ロゴスという言葉は、プラトンの対話書「カルミデス」の中に出てきます。ひどい頭痛に襲われたカルミデスを、ソクラテスが呪文を唱えながら薬草を与えて治します。プラトンの説明によると、テルプノス-ロゴスとは優しく単調な言葉で、ティモス(感覚中枢)に「このうえなく精神が集中した静かな状態」をひき起こすものです。
妊婦は習熟するにつれて、テルプノス-ロゴスの助けを借りないでも、心の中で念ずるだけでソフロニゼーションを実行できるようになります。
次に、《デソフロニゼーション》とは、その人の目覚めの状態、つまり通常意識に戻らせる過程です。
《ソフロニゼーション》を実行するためには、まず両目をつぶり、顔から足先までのすべての筋肉を弛緩させることから始まります。眠りに落ちる間際の意識の状態が体得できるまで、このリラックスした状態を続けます。
次に、《イントラ-ソフロニック行為》とは、リラックス法の筋肉と呼吸法の訓練を指します。
ソフロロジー式分娩教育は、以下を目的としています
この期間では積極的リラックス法は、妊娠した女性が自分の体の状態とその空間的位置をよく認識することにより、妊娠による体の変化に順応していくのを助けるものです。
また、積極的リラックス法は、胸やけや吐き気、嘔吐、便秘、ひどい不快感など神経性異常を和らげ、我慢できるようにします。神経性異常はいずれもひどくなると、耐えがたく、社会生活を妨げられます。
この期間、積極的リラックス方は、著しい体系の変化(腹部のかさばりや胸部の発達)をよく同化し、受け入れられるようにします。
実際、体系は変化していくにもかかわらず、今日の女性は一定の美的イメージを捨て切れません。しかし、積極的リラックス法によって高められた心理効果によると、妊娠による体系変化にもうまく対処できます。
ここでは積極的リラックス法は、妊婦の持つ重圧感や疲労感を克服するのに特に効き目があります。
さらに、分娩が近づくにつれて起こる心配や不眠症をも取り除きます。
産痛を和らげるため、子宮収縮を受け入れる心理状態にします。
また、リラックス法と呼吸法は、胎児に十分な酸素を送り、子宮の活動を促進します。第3段階の姿勢(あぐら)は、分娩に重要な骨盤(小骨盤)にエネルギーを集中するのに役立ちます。
産婦人科ソフロロジーのおかげで、褥婦は母親としての役割に容易に順応でき、一層の自信を持って、未来に立ち向かうことができます。
リラックス法を行った後の平穏な状態は、母乳授乳をするのに適しています。また、会陰部をひきしめ、腹筋を元に戻すため、分娩後も数週間はエクササイズを続けましょう。
毎日練習すれば、集中力がついてきて、瞑想とは何かがわかるようになります。いわゆる《待機の状態》です。練習を積むと、こうしたことを実際の分娩時に効果的に再現することができます。
正しい姿勢と正しい呼吸。そして、我が子の誕生を肯定的にイメージ化すること(ただし、客観的な事実は見失わないでください。難産のために鉗口の使用や帝王切開など、産科的処置を必要とすることもあるからです)。さらに、自信を持ち、意欲をかき立てること。そうすれば、あなたの精神作用は力強く活気に満ちたものとなり、どんな事態もうまく乗り切れるでしょう。
自分の長所、なかでも自覚・自信・希求力などをすべて発揮したあと、時間をかけながらゆったりと呼吸し、デソフロニゼーションに入ります。
陣痛が始まったら、赤ちゃんが酸素をもらって、元気にしているイメージ。自力で産道に向かって回旋しているイメージ。徐々に子宮口が開いていくイメージ。赤ちゃんと一緒に頑張っていること。この陣痛はかわいい赤ちゃんに会えるための大事なエネルギーなのだということ。一つ一つ思い描きながら呼吸します。
リラックス出来ると陣痛と陣痛の合間に眠くなります。これで分娩時間が伸びる事はありません。いいイメージといいリラックスが得られると、子宮・産道がとてもいい状態になります。
分娩室でいきみの方向を確かめておきます
36週くらいになったら、夜寝る前にお布団の上で3~5回やってみましょう。
少しづつ、ゆっくりと、息を深く吐き出しながら、いきむ。ただ息を吐くことだけに専念。赤ちゃんへの圧迫を少しでも軽くしてあげてください。いきみが無くなったら、普通の呼吸に戻ります。赤ちゃんと一緒に”一休み”です。
DVDをご用意していますので見てみましょう。
リラクゼーションのCDを聞きながらリラックスしましょう。
―いかがですか?
「早く赤ちゃんに会いたい。」…
「音楽を聴きながらイメージすると眠くなる。」…
GOOD!お産の準備完了です。
育児も楽しいものになるでしょう。
あなたとあなたの赤ちゃんの、愛情あふれた感動的なお産になりますように…
スタッフ一同、精一杯応援させていただきます。―
妊婦がよく持つ不安の1つは、出産時の夫の立会いは認められないのではないかということです。そんなことになれば、出産時に心細さを感じるというのです。
若い妊婦のほとんどは、夫の立会いがよいお産を成功させる1つの要因だと考えています。
「自分のベッドや戸棚、整理たんすを分娩室に持ちこむことができたなら私は途方に暮れることも、こわがることもなかったのですが…。幸いなことに、夫がそばにいてくれたので、安心しました…」
「私は、夫にさわられたくなかったし、実際に接触を拒絶もしました。夫への激しい嫌悪感のようなものがあったのです。でも、彼が部屋から出て行くと考えた途端、『出て行かないで』とたのみました…」
「たとえ何があろうとも、彼を頼りにしておればよいと思っていました…」
来院する夫たちの多くはすでに、妻を通してリラックス方を知っています。
にもかかわらず、夫たちは潜在的に不安を持っています。というのも、こと分娩に関しては、自らの意志と直接行動だけではどうにもならないからです。
しかし夫たちは、妻を助けて、我が子の誕生を共に体験することができます。
もし夫が望めば、分娩室に入っても構いません。ただし、感染防止上、常時マスクを着用します。同時に、赤ちゃんのために高温に保たれている分娩室環境に耐えられないときには、室外に出てもよいことを説明しておきます。
夫の立会いは、分娩のさまざまな段階において、どのような手助けとなるでしょうか。
妻がシャワーを浴びたり、洗髪するのを手伝う。
いらいらしたり、産院に向けて超スピードで運転しようとしないこと。
出発のグッド・タイミングを妻は講座で学んでいるので、あわてることはありません。
妻がリラックスできるようにしむける。
妻の性格に合わせた言葉で勇気付けます。産婦の中には、干渉されるのをあまり好まない人がいます。また、数時間も経つと、夫婦に疲れが見えますが、効果的な言葉で、出産の終わりまで励まし続けましょう。
「いいぞ。頑張れ」「しっかり息をしろ」「上出来!」「まあ、とにかく落ち着け」「収縮がなければ、リラックスしよう」「いいぞ、いいぞ」「もう少しだ、元気を出せ」などと、声をかけましょう。
リラックスしているかいないかは、本人よりも周囲の者の方がわかりやすいものです。つまり、顔が引きつり、口を締め、両手でシーツを握りしめる、など。そんなとき、夫は妻にこう言って、気持ちを和らげます。
「眉間のしわをなくして、あごの力を抜いてごらん…楽になるよ」
そして、ソフロロジー専門家のように、リラックスさせるべき体の部分をやさしく教えます。
出産日にとまどうことのないように、また呼吸の調整が手伝えるように、さまざまな呼吸法を夫に教えておきます。
痛みが背中に響くようなとき、妻の頼みに応じて夫は背中の下部をマッサージしてやるのもよいでしょう。
愛撫をはずかしがることはありません。自分が愛されていると思うと、人は強くなり、痛みに立ち向かうと同時に、赤ちゃんをしっかり産もうと勇気づいてくるものです。
こうしたマッサージを軽い愛撫という形で、腹部へ効果的に行うには、背骨の下の方、仙骨と腸骨の関節のあたりに手のひらか握りこぶしをあてるとよいでしょう。
モニター装置を見ていると、子宮収縮の変化が1枚の紙に記録されて出てきます。たいていの場合、次の変化が予測できるので、これが告げられれば、産婦は次の収縮に対して準備できます。
「夫が『やってくるよ』『上がるぞ』と言うたびに、背骨を伸ばして頭を上に突き上げるようにしました。そうやって身構えていると、収縮は同じようにきましたが、知らせのなかったときよりも痛みが少なくてすみました。そして、収縮の最中に『下がるぞ』と言う夫の声が聞こえると、この瞬間、『よかった!3秒後には痛みがなくなる。何もかも忘れてしまえる…』とホッとしました」
分娩室は暑くて、いきむと汗が出やすい環境です。霧吹きで産婦の顔と口をぬらし、涼しくしてやるとよいでしょう。
娩出の際には、産婦の背と肩を支えてやります。産婦は息をつぐとき、頭を後ろに引きたがるので、その際には力を弛めるのを忘れないようにします。
出生時に父親が立会うケースがふえてきたため、新生児の最初の世話について父親にも説明することにしています。
産後数分で、新生児の口または鼻孔に細い吸引カテーテルを差し込み、新生児ののどの奥にある粘液と羊水を取り除くようにします。これは、新生児の呼吸を楽にするもので、新生児の状態によっては酸素マスクが付けられることもあります。
次に、反射の検査も含め、完全な検査を新生児に実施します。これによって思いもよらぬ異常を発見することがあります。
新生児の出生1分後、5分後、および10分後にアプガー指数を測定しますが、その値は正常分娩では8から10の間です。この指数は、新生児の皮膚の色や反応度、心拍数、筋肉の緊張度、呼吸器の動きを観察して点数化します。
消毒のために、両目に点眼します。
父親がそばにいれば、臍帯処置と臍帯把持鉗子の使い方について説明します。
父親の前で、名前を付けた腕輪を赤ちゃんの手首に付けます。
赤ちゃんの両手、両足が軽く紫がかっていても、父親は心配する必要はありません。
いわゆる産瘤という、赤ちゃんが産道を通るときに生じる頭の変形がよく見られますが、これについても心配することはありません。何日か経つと、自然に消えてしまいます。
なかには、頭血腫という皮膚下の血を見ることがありますが、これも同様に消失します。
講習に出席する父親のほとんどが、分娩に立会う不安を語っています。
「何をしたらよいか、わからないのが不安で…」
あるいはまた、「妻を喜ばせるために…」という人もいます。
「あまり来たくなかったのですが、妻に言われたものだから…」
「どういう風に手伝えばよいか、本能的にわかっていたいと思います。その場にいて、手をとってやるとか。些細なことのように思われますけど…」
もっと動機のはっきりした人もいます。
「とにかく妻を助けるにはどうすればよいか知ろうと思って。ここに来るために、ほかの約束を延ばしました。」
「これまで妻といっしょに、たくさんのソフロロジーの音楽を聴いたものですから…」
「何があろうとも、出産には立会いたいと思っています」
「私はすでに我が子と接触しました。妻のおなかの上に手を置いて赤ちゃんが動くのを感じましたし、話もしました…」
出産に立ち会った父親に感想を聞くと、次のような答えが返ってきました。
「私は妻の腰部を一生懸命マッサージしてやりました。収縮のたび、何時間にもわたって…。おかげで、翌日は私も妻同様にぐったりしたほどでした」
「出産の間ずっと、妻といっしょに呼吸法をしました。のどが痛くなりましたが、後悔はしていません。妻と同じくらい、いきんだので、しまいには私まで出産したような気になりました」
「最後の何時間か、妻はなかなかリラックスしませんでした。眉間にしわを寄せ。しかめっ面をして…。そこで私は彼女に体のこの部分、あの部分と指示しながら、リラックスするように言いました。それがずいぶん助けになったようです」
分娩時の父親の役割は、無理に励ますよう努めなくても、ただその場にいるだけで、産婦を元気づけるものです。
ソフロロジー教育から私が得た恩恵を話す機会がやってきました。私は週に2~3回、適度に練習する程度でしたが、とても効果はありました。
私は3月5日に2人目の息子を出産しました。10日間、入院しました。夫は他県で働いているため、分娩に間に合いませんでした。
夕方6時ころから始まった収縮はとても不規則で、痛みはありませんでしたが、平常よりは頻繁に訪れました。私は軽く夕食をとり、夜10時ころソフロニゼーションの助けを借りて、すぐ眠ることができました。
深夜2時ころ、10分おきの収縮で目覚めました。恥骨上部を軽くマッサージすることで完全に我慢できる程度のものでした。朝4時ころ、収縮が5分おきに起こるようになり(それほど強いものではありませんでしたが)、産院に出発しました。
病院に到着したとき、頸管の開大は約4cmになっており、収縮は少し強くなりましたが、ソフロロジー式呼吸法(積極的呼息法)で容易に乗り越えられるものでした。5時に、胎胞を人工的に破りました。それから2時間、私は第3段階の姿勢を取り、収縮中はソフロロジー式呼吸法を実行しました。収縮と収縮の合い間には、ソフロニゼーションによるリラックス法を実行しました。
娩出は、助産婦が会陰切開を好まなかったため、少し長くかかりましたが、4回いきんで、朝7時に出産しました。
結論としてソフロロジーは、夫がいなくても冷静でいられた点で、非常に役立ちました。座った姿勢をとると、収縮時の痛みが驚くほど和らぎました。これが仰臥位だと、痛みの感覚が上昇してきて、吐き気を催すほど体全体に広がる気がします。
その上、大きい赤ちゃんを私の小さい骨盤(レントゲンによる骨盤測定では、峡部平均9.5cm~10cmほど)で出産するという恐れ、さらには夫の不在による不安もソフロロジーによって、どれほど救われたことでしょう。
誕生を待つ間、私たちは長い間待ち望んでいたときがやっと訪れるという幸福感でいっぱいでした。
私は、風疹に対してもトキソプラスマ(寄生虫)に対しても、免疫になっていませんでした。その日まで温室で暮らしていたようなものです。だから妊娠中はずっと、火にかけた牛乳のように最新の監視を受け、おかげで感染症は起こしませんでした。
4ヶ月目から、萎縮性皮膚断裂(妊娠線)を予防するために、植物繊維のタオルで胸部と腹部、大腿部をマッサージしました。そしてソフロロジーの訓練を週に3回実行しました。完全呼吸法と積極的呼息法を実行しながら、分娩準備を整えていきました。私は、体内の生命に対して精神集中をする講座も受けましたし、ソフロロジーのカセットも聴いていました。その結果、私は出産を、子供との対面という肯定的瞬間としてとらえられるようになりました。
ソフロロジー(7ヶ月目から、ほぼ毎日30分間の訓練)のおかげで精神統一がしやすくなり、4年間の大学生活動も有意義に送ることができました。
私の息子の出産について、もう少しくわしくお話します。
陣痛は夜9時に発来し、朝4時までは完全呼吸と積極的呼息法を実行することができました。収縮のたびに、夫が、背中をさすってくれました。しかし、その後はほとんどの時間、ゆっくりとした吹きかけ呼吸法を行いました。朝8時まで第3段階の姿勢をとり続け、あっという間に、時間がたっていました。
その間、夫はずっと付き添い、私の唇を湿したり、両腕に霧吹きをかけて冷やしたり、手を握ってくれたりしました。大変な苦痛のあとに何とも言えない恍惚感を経験しました。かつて味わったことのない、喜びと痛みの中で、それによって、私は赤ちゃんをとても近い存在として感じましたし、それ以上に、気付かなかった未知の自分自身を発見できたような気がします。
何度かいきんだ後、生暖かい長い川のように、赤ちゃんが私の体から出てきました。赤ちゃんは元気で、生まれるなりもう泣きわめいていました。私は赤ちゃんを抱き上げ、おなかの上に乗せてみました。
頭はでこぼこだけど、体がとてもとても大きく見える赤ちゃん―私は夫と抱き合って泣きながら愛の言葉を交わしました。私たちの子どもが生まれ、現に生きて、そこにいたという―その瞬間は私たち2人の中に一生涯忘れることのない思い出となっています。
息子が大きくなって、いっしょに遊ぶ弟か妹をほしがれば、また同じような挑戦をするつもりです。
ソフロロジーは、私の痛みをさほど軽くはしてくれませんでしたが、少なくともそれを我慢し、収縮と収縮の間にほほえみ、さらにそのあと回復、リラックスする力を与えてくれました。
分娩室での私は興奮しながらも微笑をたたえ、力に満ちていたそうです。
胎児を苦しませることもなく、また帝王切開をしなくてすんだのは、ひとえにソフロロジーのおかげです。
私はこれからも訓練を続けるつもりです。これから3人で新生活を送る上で、より一層内面的な安定が必要ですし、ソフロロジーは私の知的精神の統一に役立つと思います。
神経質で心配性の私ですが、積極的リラックス法のおかげで、妊娠中ずっとゆったりした気持ちで過ごせました。無意味な緊張を取り去り、リラックスする―ソフロロジーは、私に自分の体を認識させてくれました。私は、週5回訓練しました。そして、訓練のあとには必ず30分間の休息をとり、妊娠しているということを心の中でかみしめるようにしました。
周囲の人たちは、私がとても落ち着いていて、悲観的な考えにとらわれていないと言ってくれました。
ソフロロジー式分娩教育によって、陣痛のあとの休息と緊張の緩和を学びました。妊娠中ずっと、私は自分の赤ちゃんと特別の関係を持っていると感じました。ソフロロジーはまた、数ヶ月または数週間先には自分のそばには赤ちゃんがいるということをはっきり実感する上で、大変役立ちました。
私は自分の体を分析したり、自分自身をコントロールしたり、周囲の状況を把握する方法を学んだと思います。
私はこれまで他人とコミュニケーションするのがとても下手でした。でも、ソフロロジーのおかげで、他人を理解することは自分自身を理解することから始まるのだということに気がつきました。母であることの意味もつかめたように思います。今度は2番目の子どもの出産でしたが、長男とのコミュニケーションも以前よりずっとうまくいっています。
この訓練で得た最大の変化は、自分が何かしなくてはならないときや重大な決心をするときに、以前ほど責任感でがんじがらめになることがなくなったことです。信頼と調和を持って生きること、つまり私自身の積極的な面を表面に出すことで大きな効果が上がりました。
講習の結果はまず、私の緊張を解いてくれました。私はどちらかと言えば、神経質で心配性のため、このことは妊娠中、とても役に立ちました。
5ヶ月間、週5日ほど訓練しました。訓練の初期、ソフロロジーは肉体的弛緩にも役立つように思えましたが、そのうち、分娩の<予行演習>でもあることがわかりました。当初はどちらかといえば、お産が怖かったのですが、講習に続けて出席するうちに、その不安は薄れ、出産当日には恐れを感じませんでした。
お産は、不規則な収縮で始まりました。午前8時から11時にかけて、収縮は規則的に(5分~7分おき)、だんだんと強くなってきました。でも、それほど痛くはなかったので、分娩が目の前にさし迫っているとは思いませんでした。テレビを見たり、夫とゲームをしたり…。並行して、積極的呼息法を行いました。それから、シャワーを浴び、洗髪して、平静な気持ちで産院へ出発しました。
産院に着くと、助産婦から頸管が指2本分開いていること、そして入院の時機に間違いのなかったことを聞きました。1時間後、再検査をすると、分娩過程の半ばにあることがわかり、それから2時間後に娘が生まれていました。その間、とても強く長い収縮が規則的にやってきましたが、乗り切ることができました。 分娩の最初のうちは、座って過ごしました。そのうち、横になる方が楽なように思い、最後の30分間は足を分娩台の足受けに乗せて寝ていました。呼吸はずっと積極的呼息法でしたが、生まれる間際、数回の激しい収縮時には、吹きかけ呼吸法を採り入れました。この呼吸法は練習の時には好きではなかったのですが、いつのまにか自然に行っていました。おかげで、赤ちゃんがぐんぐん下りてきても、気を楽にしておれました。
娩出は、かなり早く進みました。いきみは3回だけですみ、会陰切開も不要でした。第4回講座でいきみ方を学び、第7回講座で4~5回、実際にやっていましたので、助産婦の励ましや指導に対しても最良のやり方とタイミングで応えることができました。 ソフロロジーによって、分娩をありのままに受けとめることができました。つまり、それは苦しいには違いないのですが、克服できないものでもなければ、驚くべきものでもないということです。 私はこれからもずっと折にふれ、リラックス法をするつもりです。これまでの私は、リラックスするのが下手だったし、実際にどのようにすればよいかも知りませんでした。だから、今度の出産を契機に、折にふれてリラックスするよう努めたいと思っています。
6年前の初産では、どうにも我慢できないほどのお産を経験しました(そのときの私には何の知識もなく、産院では産前教育などほとんど皆無の状態でした)。18~19時間にも及ぶ分娩では、痛みを耐えるための介助もアドバイスもありませんでした。娩出はつらく、出産後はただもうぐったりしました。そのときはもう、子どもなんかいらないと思ったくらいです。
それから6年、私はまた、子どもがほしいと思い、夫も賛成してくれたものの、不安は消えません。そこで、以前の経験にこりて、今度はソフロロジー法を選びました。非常に神経質な性格ですから、初めは大して信用していなかったのですが、とにかくいいということは何でも試してみようと思ったのです。
妊娠初期の2ヶ月間、私は吐き気に悩まされ、3ヶ月にわたって、不眠が続きました。妊娠5ヶ月目には、肘を骨折し、3時間に及ぶ手術を受け、それから2ヶ月間は腕が不自由でした。
ところが、リラックス法の初回の講習を受けてからは不眠症が治り、体調はずっと良くなりました。
自分の肉体に完璧な調和を見出し、大きいお腹も恥ずかしがらずに、ありのままに受け入れることができました。
息子や夫との関係も、以前よりよくなりました。2人によれば、私は以前より落ち着いてリラックスし、にこやかになったとか。骨折による腕の痛みも気にならなくなり、鎮痛剤の力を借りずに機能が回復できました。おかげで出産に対する自信が湧きました。
出産予定日が近づいても、いらいらせずに毎日を送ることができました。当日、これが陣痛かと信じられないほど楽に子宮収縮を我慢できました。収縮と収縮の間を私は家族と一緒に過ごしたり、家事に励んだり…収縮が起こるたびに、積極的呼息法を実行しました。
ほかの人から見ると、祭りにでも出かけるのかと思われるほど、私はリラックスしていたそうです。午後5時半、産院に到着。頸管はすでに5cm開大していましたが、痛みはありませんでした。分娩室では、7時まで助産婦さんや看護婦さん、夫と冗談を交わしました。それからやっと、いきみに入ったのです。
実際の娩出はかなり長時間で、困難なものでしたが、それまで娩出の訓練を何度も行っていたので、疲れませんでした。
このとき、夫は出産に立ち会ったことに感動し、私の助けになることに幸福を感じていたようです。手をとり、そばにいることが、夫の私への愛情の表現でした。
結論として、ソフロロジーのおかげで私たちは今度の妊娠・出産で素晴らしい思い出をつくることができました。夫は2人目の子どもを別に望んではいなかったのですが、今は3人目もほしいと思っています。私も喜んで3回目の妊娠を受け入れるつもりです。
分娩が始まっても、落ち着いていられました。出産はとても大きい感動でした。痛みを伴うものではありましたが、私の人生における最大の幸福でした。(その痛みは私が自分で経験したのであり、他からこうむったものではありません)。
第3段階の姿勢をとって、こう感じていました。
―私はそこにいる。存在している。状況が手に取るようにわかり、自分は生き生きと、どのような出来事にも対応しうる覚悟ができている。収縮の初期、子宮が堅くなりかけ、まだ痛みが訪れないうちから、しっかり呼吸する準備ができている、と。
時間がたつにつれ、これまで気付かなかった強さが出てきました。この心身両面にわたる強さは、疑いようのないものです。本当に経験しないとわからないと思います。娩出のために全力をあげていきむと、最後には恍惚感へ達します。この恍惚感は、あふれるほどの幸福感、深奥の意識というべきもので、日常生活の喜びとは比較にならないほど神々しいものです。かわいい私の赤ちゃん、輝子―その名の通り、日の出と同時に射す曙のように、誕生の瞬間は忘れがたい思い出です。
太陽が地平線すれすれに昇り始めた時、助産婦さんが「赤ちゃんはあなたそっくりよ」と教えてくれました。
いきむにつれ、赤ちゃんの頭が外に出ていくのを感じました。そして、その頭が私の体からすっかり出たとき、太陽も雲の間から完全に脱け出ていました。赤ちゃんのバラ色の体が私のお腹に乗せられたときには、神様に感謝しました。
なお、私は長い間、不妊でしたし、もうどうしようもないと思っていました。それだけに、今度の赤ちゃんは天からの授かり物、神様の贈り物だと思いました。
強い痛みだとは思いませんでしたし、うんざりすることもありませんでした。いうなれば、客観的に受け止められて、理性を保てるほどの痛みであり、どうにもしようがない、侵されるような痛みでは決してありませんでした。
頸管の開大中、強度の痛みがひどくて混乱しても、すぐ肯定的な態度と自信を取り戻せました。それは、次のおかげです。
―収縮時における座法と積極的呼息法。これらは、とても長く思える分娩中、非常な助けとなりました。その際、呼息時に腹部をへこませるようにしたおかげで、深い弛緩を得ることができました。
―頸管の開きに意識を集中させたこと。頸管の開きぐあいを感じるのに役立ちました。
初産はとても長くて、苦しいものでした。収縮のたびに、忍耐の限界を超えていました。ところが、今回の出産では、収縮による痛みはほんの少しで、特に収縮の波の一番高いところしか感じませんでした。つまり、10~15秒間くらいです(このときこそ、私はソフロロジーに感謝しました)。そして、この収縮の一番強い時期の前後で、私はとてもリラックスできました。収縮が大変意味のあることで、役立つものであることを感じました(そして実際、その通りだったのです)。
収縮の最中は座っていました。時々両腕で上体を支え、伸びをしました。夫は、呼吸を指導してくれました。片手を私のお腹の上に乗せ、もう片方を背中に当ててくれました。というのも、そこが一番、収縮を感じるところだったからです。おかげで、痛みはだいぶ軽くなりました。
これまでの分娩は、あまり幸せなものではありませんでした。しかし今回の出産は、ソフロロジーのおかげで、よい思い出として残るでしょう。
子宮が収縮すると、とたんに苦しくなり、開大5cmのときには終わりまでたどりつけるかどうか自分でも危ぶんだくらいです。そのとき、妊娠中に指導してくれた助産婦さんの言葉を思い出しました。「物事の良い面に目を向けるのです。痛みや苦しみが激しいということは、それだけ終わりに近づいていると考えるのです。」
それから私はリラックスする姿勢(右側を下にして横になり、片方の脚を腹の下で折り曲げる)で、長時間のソフロニゼーションを実行しました。収縮の最中に完全呼吸法でゆったりと息をすると、収縮の強さが和らぎ、休息時が延びるような気がしました。夫が私に眠っているのかとたずねました。助産婦さんも、低い声でしか話しかけません。完全に眠りに落ちる間際の状態でした。
開大8cmで分娩室に入りました。そこで私は、分娩期(3~5cm)に役立った第3段階の姿勢をもう一度とろうとしました。でも目まいがして、また横になりました。子宮口開大8~10cmに至る最後の2cmは、たった1回の収縮で開きました。そのとき私は、頸管がまだ十分に開いていないと思い、いきもうとしましたが、赤ちゃんはもう外陰部まできていたのです。そして次の収縮で、赤ちゃんが生まれました。
だから、今回のお産は実に肯定的に受け止められました。分娩所要時間は3時間40分で、そのうち強い苦しみを感じたのはたった4分ほどでした(最後の3回の収縮時には、私も3回、叫びました)。
ソフロロジーのおかげで収縮と収縮の間には、回復することができました。そして、姿勢を自由に変えることによって、痛みを子宮だけにとどめることができました。その間、私を励まし、私のささやかな願いをかなえてくれた助産婦さん方の親切と全面的理解は、これから決して忘れられません。
ソフロロジーについては、「鎮痛」に代わる「超痛」という新語をあててもよいぐらいです。なぜなら、子宮収縮は痛いものなのに(それを私は3回経験しました)、ソフロロジーのおかげで今回コントロールできたからです。障害物を跳び越える馬のように、私は痛みを跳び越えました。ソフロロジーによる準備をしていなかった前回は、3時間にわたる収縮があり、30分間も叫び声をあげ続けました。
これに対して、今回の分娩では、ソフロロジーのおかげで収縮を完全に乗り切ることができました。特に最後の10回の収縮は、精神的に非常に強くなくてはなりませんでした。
私は全ての収縮を、第3段階の姿勢で乗り越えました。頭で天を突き、うなじを堅くし、両足で地面を踏ん張るようにしました。子宮も赤ちゃんもいっしょに体外に出ていくような気がしました。収縮の波が強さの度合いを変えながら、高低を繰り返すのを感じました。非常にゆっくりとした呼吸で下腹まで空気を吸い込み、それから息を吐くことで、収縮の痛みが軽くなり、酸素も十分に送られてくるのがはっきり感じられました。まるで呼吸が強い子宮収縮を私の体外に押し出しているかのようでした。説明するのは難しいのですが、この呼吸法をすると、生命が吸息とともに入ってきて、呼息とともに体の下方まで伸びていくように感じました。
急激な痛みは、全然感じませんでした。収縮をよりよく感じるように、精神を集中させて収縮をコントロールしました。つまり、収縮のたびに頸管が開き、待ちに待った赤ちゃんの誕生に近づくということ、それからもうすぐ男の子か女の子かわかるといったことを考えました。
家で待機している間、私は収縮をとても上手にコントロールしました。それがどのぐらい続くか計測し、そのリズムに注意しました。収縮と収縮の間はベッドに横たわり、十分にリラックスしました。産院に着くと、頸管は6~7cmに広がっており、1時間後に赤ちゃんが生まれました。
リラックス法によって、私は自分自身を取り戻し、自分の体を再発見できることがわかりました。座ったまま目覚めている状態で、私は収縮を総合的に判断し、上手に対応することができました。
1本の白バラのイメージに精神を集中し、そのイメージの中へ入っていきました。すると、このバラが私に向かって開き、私を入れてくれるような気がしました。そして、花びらが私の上で閉じ、私はその中に心地よく浸りました。それは平和な隠れ家にいるようなものでした。
最後の1~2回の収縮を除いて痛みに負けたという気は全くしませんでした。それどころか、呼吸法と呼吸そのものに対する精神統一のおかげで、痛みの感覚を常に支配していたように思います。分娩は3~4時間かかりました。そのとき、とても役に立ったのは、収縮の1回1回が頸管を開くという考えです。そのおかげで、私は頸管が開大する感じを実感しました。
開大が5cmになって分娩室に移ったとき、第3段階の姿勢をとりました。そして最後まで積極的呼息法を続けました。子宮収縮をうまく乗り切るため、呼息の終わりには、下腹をうんと強くへこませながら、ひとつの緊張をつくりました。
西洋のリラックス法と東洋の精神修行である禅やヨガを組み合わせ、 精神(心)と肉体の安定と調和を得る方法です。 その手段としてリラクゼーション、イメージトレーニング、呼吸法などがあります。
自分に起こる現象を(困難な事も)自然に受け入れ、前向きに対処出来るようになります。これからの人生を、明るく、積極的に生きることが出来るのです。
妊娠中からのソフロロジーのトレーニングにより心身の安定を得、母性を育てます。“赤ちゃんを想う心・愛情”で陣痛の痛みを乗り切る“自律分娩”なのです。
“私は、命の運搬人”と考えましょう陣痛は、赤ちゃんが生まれるための大切なエネルギーです。陣痛があるから赤ちゃんに会えるのです。お母さんがリラックスできると、赤ちゃんも圧迫から解放されます。良い呼吸ができると、赤ちゃんに沢山の酸素が伝わります。
自然で、穏やかな、愛情に満ちた感動的なお産ができます。酸素を沢山もらった赤ちゃんは、元気でピンク色をしています。余分な体力を使わないので、出産後に疲労感が無く元気です。私は赤ちゃんの為にできる限りのことをした、と満足感が残ります。母と子の強い絆が作り上げられ、良い育児に